電子書籍の現状【制作現場の惨状】 今さら……第36回
今さら聞けないネットのあれこれ。
今回は
「制作現場の惨状」
についてお話します。
重要度:★★★
難易度:★★
3.制作の現場
過去2回の記事からわかるように、フォーマット・ハードの多様化を推し進めた結果、現在の電子書籍の制作現場では、大変な事が起きています。
想像してください。一つの作品を複数のフォーマットに対応させ、尚且つそのフォーマットを各種のハードに対応させるべく、数種類の分類を行い、それぞれを制作してゆく……
その作業は、それぞれのフォーマットによって使用する制作ソフト(オーサリングツール※1)が必要になり、フォーマット間の互換性があまり無いので、一つのソフトで一つのフォーマットしか制作できない場合もあります。(複数のフォーマットに対応したソフトもある)と言った具合です。
では、そもそも電子書籍のデータ制作とは、どういった手順で作られるのか?簡単に説明しましょう。
基本的には、印刷用のデータから電子書籍用のフォーマットデータを制作します。
フォーマットの回でお話した、ePub形式のデータであれば、印刷データを制作したレイアウトソフトから、制作する事も可能ですが、他のフォーマットの場合は、それぞれ専用の制作ソフトを使っての作業となります。
しかもその作業は、もう一度、同じレイアウトに組み直す。と言った内容が殆ど。
全くゼロの状態から組み直す訳ではなく、若干の手直し?程度の物から、様々のようでアプリによってかなり変るらしいです。
もう、想像しただけでうんざりです。
一般の方には想像しにくいかと思いますが、この作業でどれだけの労力がかかっているか……
つまり一つの作品だけで、膨大な時間と人員を使っているはずなのですが、実際の販売価格は数百円~とかなり安い。
話が横にそれますが、実は日本では、書籍の値段が欧米に比べて非常に安く設定されています。
その結果、アメリカでは、安い電子書籍の人気が出たと言えない事も無いですね。
しかし、日本ではそうもいきません。
この現状になってしまった原因は、前回お話したように、企業側の独自路線を狙ったが為の失策?と言えるのでは無いでしょうか。
いずれにしても現状では、制作サイドの負担が大きすぎて、先行きが暗すぎます。
せめて、汎用で誰でも制作できるような仕組み(フォーマットとハードの両面)を構築しない事には、大きな流れになる事は出来ないのでは?と思えるのですが、皆さんはどう思いますか?
オーサリングツール※1
オーサリングツール (Authoring Tool) は主にプログラムを書かないでソフトウェアや作品を作るためのアプリケーションソフトウェア。ただし、必要に応じて補助的なプログラムを書くことができるものが多い。
グラフィックツール、音楽ツール(DTM系)、出版系(DTP用)、ウェブサイト制作や運営管理に用いるWebオーサリングツール、ゲームやスライドショーなどの制作に用いるマルチメディア系、DVDソフトの制作用などがある。
出典:Wikipedia